『復讐』メカニズムの限界
ナテラ崩壊がリリースした時にヴァンパイアの新能力として『渇望』と『狂乱』が登場した。既存のテキストを能力化したものだが、テキスト欄がスッキリして筆者的には好印象。能力化したからにはこれからも推していくということだろう。
そんな新能力が誕生する中、最初期から存在する能力『復讐』はだいぶ影が薄くなった。ナテラ崩壊で復讐に関連するカードは3種類だけで、デッキの軸としても【復讐ヴァンパイア】はすっかり見なくなってしまった。昔は≪ベルフェゴール≫やら≪絢爛のセクシーヴァンパイア≫で大暴れしたというのに。。。筆者が思うに運営はもう『復讐』というメカニズムを推していく気持ちが無いように見える。というより現状のカードパワーを見た時『復讐』メカニズムは限界を迎えたように思うのだ。
今日は『復讐』メカニズムについて筆者の考えを綴っていきたい。※4000文字を超える長文になってしまったので、下の目次を活用いただければと思う。
- そもそも空気な『復讐』メカニズム
- 『復讐』メカニズムの限界で生み出されたのが≪絢爛のセクシーヴァンパイア≫
- おまけ程度の能力になりつつある最近の『復讐』
- まとめ 『復讐』メカニズムのこれから
- ・最近のカードデザイン・調整について
そもそも空気な『復讐』メカニズム
復讐はライフが10以下で効果を発揮するのはシャドバ民の間では常識だが、そもそも今のシャドウバースのカードパワーではライフ10以下はいつリーサルを決められてもおかしくない値。復讐はそんな負けそうな状況のリスクを背負う代わりに強力な効果を得られるものだが、最近のカードはそれに見合ったものでは無いように見える。
ここ最近で『復讐』に関連したカードで1番暴れたのは≪悪逆の公爵・ユリウス≫が挙がるだろう。凄まじいスタッツと常在型能力でアグロからコントロールまですべてこなせる万能カード。復讐時の能力EP無しでの進化も常在型脳能力と噛み合っているが発動する機会は現状少ない。もう1枚≪レイジコマンダー・ラウラ≫も復讐状態はファンファーレで手札のカードに疾走を与えるのみ。決定力を与える効果だが、彼女が強いというよりは≪絢爛のセクシーヴァンパイア≫の存在が大きかった。最近なら≪紅のワルツ≫が登場し活躍している。
つまりは『復讐』というメカニズムは一部強力ではあるが、その殆どが空気な存在である。そもそもROG環境(2019/07頃)になるまでのヴァンプの第一線デッキは新しい戦術を取り入れた【自傷ヴァンパイア】で【復讐ヴァンパイア】自体がいなかった。それ以前一線級の【復讐ヴァンパイア】として強烈に強かったのは≪ベルフェゴール≫の現役時代まで遡ってしまう。シャドウバースのリリース最初期から存在していたメカニズムも、気づけば新メカニズムの登場で仕方ないと言え日陰モノになっていたのだ。『復讐』が活躍するように運営はあれやこれや試行錯誤するが、その最終形態が≪絢爛のセクシーヴァンパイア≫であると筆者は考える。
『復讐』メカニズムの限界で生み出されたのが≪絢爛のセクシーヴァンパイア≫
そもそもの話、『復讐』はライフ調節をしやすいヴァンパイアというクラスにおいて、ライフを上手く管理しながら扱うものというのがリリース時のコンセプト。だが思った以上に使いにくかったのか、それともインフレについていけなくなったのか、1度にライフを10以下にしたり無理やり復讐状態にするカードが増え始めた。
運営の『復讐』テコ入れはTOGから始まる。≪ベルフェゴール≫に加えて達成条件の緩和策として≪ブラッドムーン≫が収録。だが時間制限付きでテンポも失うこのカードでは全くと言っていいほど活躍できなかった。かの≪バハムート≫が全盛期であったことも向かい風。結果≪ベルフェゴール≫を軸に据えたアグロ~ミットレンジタイプの構築で踏ん張り続けるしかなかった。そんなこんなしている内にヴァンプの主役は姦淫の絶傑と蝙蝠野郎に取られてしまい『復讐』は空気に。途中「あ~^^今宵もいい月だ~」とか言ってるやつがいたが存在が薄すぎて始まることすらなかった。
そして≪闇喰らいの蝙蝠≫がローテ落ちした2019年6月末、ROGにて≪絢爛のセクシーヴァンパイア≫と≪堕落の漆黒・アザゼル≫という簡単にかつ強力な状態で『復讐』を達成するカードを収録。この2枚を加えた7枚もの『復讐』に関連するカードをリリースし、明らかに復讐をプッシュしに来た。だが強力にしすぎた。
あまりにもお手軽に復讐を達成できるようになり、かつカードパワーのインフレで復讐時の能力が≪絢爛のセクシーヴァンパイア≫と合わさった結果、他のデッキの追随を許さないものになってしまった。今まで空気になっていたものをプッシュしようとした結果、今度は強くしすぎてしまった。なんてこったい。
≪絢爛のセクシーヴァンパイア≫は引いただけで復讐になれるという頭シャドウバースもいいところなカードで批判も相次いだが、筆者が思うに、ここまでお手軽に復讐を達成しないともう『復讐』をというメカニズムを活躍させることが出来ないのではないだろうか。
明らかに誰が見ても強力かつ理不尽な運ゲーが多発するカードデザインが試作段階で問題にならない筈がない。それでもあの能力で実装したということは、なんとかして『復讐』をプレイアブルにするための苦肉の策ではなかったのだろうか。結果はご存じ実装後16日間でのナーフ。そりゃそうよ。勿論悪いのはセクヴァンだけではなくて、復讐時の能力が昔よりも強力になった分1ターン目復讐からのカードバリューが高くなりすぎた。本来はゲーム中盤から使用されるであろう復讐能力をゲーム最序盤から使えるのだから弱い訳がない。
セクヴァンのせいで大暴れした方達(一部抜粋)
セクヴァンのようにお手軽に復讐を達成しなければ復讐のメリットが無く、ほかに使われたとしたらダメージ軽減を付与してくれるアザゼルのみ。今の時代にただライフ10以下にする復讐は自殺行為に等しい。それだけカードパワーのインフレが進んだ証拠で、『復讐』というメカニズム自体がシャドウバースについていくことが厳しくなってしまっているのだ。さらには復讐時の能力も序盤から使うには強力すぎて、中盤以降では役に立たないものが多い。カードデザインの面でかなり調整に苦労してしまうものになっている。
おまけ程度の能力になりつつある最近の『復讐』
最近リリースされた『復讐』カードで一番強いのは≪紅のワルツ≫だろう。アンリミテッドの【アグロヴァンパイア】を支えるカードで、復讐達成で進化権+3ダメージは今のアンリミテッドにおいて命取りになるスペック。対戦相手としては今までのようなライフを11で留めておくプレイングや駆け引きが生まれてゲームを面白くする要因になっている。
だが正直≪紅のワルツ≫以外の『復讐』カード達は正直なところあまり見かけない。そもそもゴールド以上で『復讐』に関連したカードが少なく、また実践レベルでない。もっと言うと『復讐』時の能力がおまけ程度かデメリットの帳消しでしかなく、ゲームを決定づけるものが殆どいないのだ。どちらかといえば2pick向けの能力になりつつあるように筆者は思う。正直構築レベルで作るとなると相当デザインチームに負担をかけてしまうし、オーバースペックか産廃の両極端になってしまうことを今までの歴史が証明している。そのため発動できればラッキー程度な能力が最近は多くなってきている。
まとめ 『復讐』メカニズムのこれから
冒頭でも話したように公式はもう『復讐』というメカニズムよりも新能力の方をプッシュしていくように思う。というのも新能力の方が今のシャドウバースにマッチしているのだ。自傷を行うカードはテンポを失わず展開とナチュラルに絡めることができるし、軽いドローも多い。ライフ10という厳しい条件が課せられる『復讐』よりも断然達成しやすく扱いやすい。カードデザインの面で『復讐』よりも断然行いやすくデザイナーへの負担も少ない。新しいメカニズムをこれから出し続けるためにも『復讐』を推すメリットも少ないのだろう。
『復讐』を活躍させるためにはアザゼルのようにメリットを付与するか、セクヴァンのようにライフ10以上かつお手軽に発動できるようにしなければ正直使い物にならない。アルティメットコロシアムでライフ11以上でも復讐を発動できる≪猪突する狂戦士≫が登場したが、環境では全く使われていない。そもそも2コスト払ってターン終了時までというのは今のシャドウバースに見合った効果ではない。インフレ事態についていけていない。これからも『復讐』を使っていくには理不尽なまでに強いカードを刷るか、メカニズムの根本にメスを入れなければ活躍するのは難しいだろうと筆者は考える。それだけ『復讐』というメカニズムは限界に来ているのだ。
・最近のカードデザイン・調整について
シャドウバースをプレイしていると、リーダー特有の能力を使わせたいという運営の思いは伝わってくる。ただ正直なところデザイン面で『復讐』はかなり限界に来ている。でもそれはある意味仕方ないことで、他のカードゲームでも無くなっていったテーマ・メカニズムは数多く存在している。
筆者が一番伝えてたいことは無理して全てのメカニズム、並びに各リーダーを活躍させなくてもよいということ。正直8リーダー全てを環境上で活躍させるのは不可能。活躍させようと無理やり超アッパー調整を行っても、それはそれで環境が歪になるだけ。そもそも筆者は1強環境自体に否定的ではない。TOGドラネク対戦はとても楽しかったし、ROG【復讐ヴァンパイア】はエキサイティングだった。運営としては全リーダーが活躍するのが1番望ましいと思うが、だからといって超強力カードの収録や能力調整は正直間違っていると思う。強力なカードを収録し続けて待っているのは理不尽な先行ゲーだけで、それではユーザーが離れるだけだ。
かつてはかの「ワンダーランド・ドリームス」の一件でカードデザインについて謝罪文とデザインの見直しを行っていくと運営は言っていたが、それももう3年近く前の話で、気づけばどんどんインフレの方向に進んでいる。インフレ自体は仕方ないことだけれど、強力と理不尽の違いは認識してデザインに当たって欲しいと作者は願う。
ここまでの長文、読んでくれてありがとう。
おわり